『9階団地のスーパースター』という舞台を観劇しました。
3回観に行って3回とも泣いた人間による自分語りです。
この舞台で得た感情をどうしても文章として形に残しておきたかったので、お付き合いくださる方がいればよろしくお願いいたします。
ネタバレを多分に含みますのでご注意ください。
本当にただの個人の自分語りです。
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毎公演必ず泣いてしまうシーンがあった。
ブッチャー、そしてお母さんとの別れの場面。
私の祖父も、脳梗塞で倒れて半身に麻痺が残り、独りでお風呂に入ったときに亡くなった。劇中の輝一のお母さんと全く一緒。
祖母が脳卒中で倒れて寝たきりになり施設に入ってから、祖父は一人暮らしだった。
介護ヘルパーさんが来ない日にお風呂に入った祖父。
「なんでひとりでお風呂入ったん?」という輝一のセリフが、あの時の家族みんなの感情とリンクしてしまって、泣かずにはいられなかった。
祖父は私にとって、スーパースターというよりは「博士」という感じだった。
物静かでなんでも知っていて、少し気難しいけれど大きな愛情で私に接してくれる人。
子供のレベルまで降りてくるような人ではなくて、誰とでも対等に話す人だったから私には難しいところもたくさんあって、だから大人になった今、ものすごく話したい人。
亡くなった知らせを聞いたとき泣かなかったのは、現実を受け入れられなかったから。
もう10年近く前の話なのに、今でも受け入れられているのかよくわからない。
前述した祖母も、昨年亡くなった。
祖母は手先が器用でなんでもできて、言葉や表現が好きな人だった。
脳卒中で左脳をやられ言語の機能を失ってしまい、何も話せなくなった祖母。
寝たきりで私のことをわかっているのかいないのかもわからなくて、お見舞いにいくのがいつも怖かった。
何を話しかけたらいいのかわからなかったから。
祖母とのおしゃべりが大好きだったのに。話したいことはたくさんあったのに。
返事が返ってこないことがつらかったんだと思う。
寝ていると時々夢の中に祖母がでてきた。
夢の中の祖母は、いつの間にか元気になっていて私と話をしてくれるのだ。
ちょうど、劇中でブッチャーが現れた時にだけ元気になるお母さんのように。
輝一は漫画の中に願望を託していた。私も夢の中に願望を託していた。
そういったところも重なって涙が止まらなかった。
祖父母との思い出の家は、たぶんもうすぐ無くなってしまう。
誰も住まなくなった家は荒れ放題で、管理もままならないから。
一回壊してしまったらもう元には戻らない。
心のどこかで寂しくて嫌だと言いたくて、でも大人の私はそれを飲み込んで物分かりのいいふりをしていた。
輝一が団地を守るために大声をあげて抵抗している姿が、切なくて愛おしくてほんの少しだけ羨ましかった。
最後、団地を引き払うシーン。
どこか清々しい顔をしてスケッチブックを抱えた輝一を見て、「守るって形を守るだけが全てじゃないんだな」と気付かされた。
ずっと迷子だった輝一は、お母さんとの思い出が自分の道を照らしてくれていることに気づけたんだと思う。
大人になってからの私も迷子になってばかりだけれど。
周りの才能に打ちのめされて、何もできない自分が悔しくて情けなくてどうしていいかわからない夜が何度もあるけれど。
思い出は道を照らしてくれているのかもしれない。
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素敵な舞台をありがとうございました。
たくさん背中を押してもらいました。
いろんな感情をしっかりと受け取りました。
明日からはちょっと強くなって生きていける気がします。